校長コラム
2024年8月9日
子どもが挫折して無気力に!その時親はどうしたらいいの?
目標を達成しようとして期待通りの結果が得られなかった時や、スポーツの大会で負けてしまった時などに、がっかりしてやる気が出なくなったり、もういやだ!と絶望してしまったり。「挫折した感情」いわゆる挫折感は、子どもにも珍しくありません。
子どもの感情は、成長と共に増えてきます。
小さいころは「できない=イヤ」
というシンプルな感情でしたが、
年齢を重ねていくと、
「できないかもしれない=不安」
「できなかったらどうしよう=心配」
「やっぱりできなかった=挫折」
「やらなければよかった=後悔」
このように、向き合ったり乗り越えたりする感情も変わっていきますね。
年間1.4万人が受講する、1歳から高校生までのキッズダンス専門 Ti-ccha(ちっちゃ) KID’S DANCE SCHOOL 校長であり、チャイルドコーチングアドバイザー&上級心理カウンセラーTi-cchaより、子どもが挫折をした時、親御さんとしてどのように導き、サポートすることで、挫折から立ち直る力を身につけ、挫折を恐れずチャレンジし続けられるかをご紹介させていただきます。
▼目次▼
・子どもの視点での挫折の見え方
・親御さんのNGな声かけ
・昭和の親世代と、令和の子ども世代の違い
・親御さんのサポート方法 3ステップ
・挫折は成長のターニングポイント
子どもの視点での挫折の見え方
大人になると、大きな挫折から小さな挫折まで、ある程度経験をすることで、対処法が身についてきている方が多いと思います。
しかし、子どもたちは、今直面している挫折に対して「経験数が少ない」のです。
挫折を感じた時を
「画用紙にさまざまな色で絵を描いた上に、真っ黒な絵の具を1滴垂らした状態」に例えて、大人と子どもの違いをお伝えしますね。
大人なら、挫折(真っ黒な絵の具)は、ごく一部と捉え、その他のこれまで描いてきた絵のいいところにも目を向けることもできます。
その他、黒くなってしまった部分を、何かいい方法で解決できないかと、考えて行動することもできます。
もしくは、新しくもう一度描いてみようと思う、意欲も持てると思います。
しかし、子どもたちは違います。
自分が楽しく感じていたこと、気に入っていた部分も、その挫折(真っ黒な絵の具)で時間が止まり、その絵全体がこれまでと違って見える子もいます。
「この先どうしたらいいか、全くわからない絶望の状態」になっているかもしれません。
挫折の経験が少ないお子さんは、他の部分に目を向けることも、自分で改善方法を見つけて行動することもできない状態が多い、と理解してあげるといいと思います。
親御さんのNGな声かけ
そのような状況にあるお子さんを前に、元気づけようとして
「大丈夫! また、がんばればいいじゃない!」
「あなたなら大丈夫!」
「挫折なんて、みんな経験することだよ!」
と声をかけたことはありませんか?
実はこのような言葉は、お子さんをさらに追い込んでしまう可能性があります。
「あなたなら大丈夫」→(根拠が示されていないと、子どもには意味不明)
根拠も示さずに軽い気持ちで発した言葉では、一番頼りたい親御さんのことを信頼できず、頼れない存在と感じてしまう心配があるのです。
もしくは、挫折に負けない子になってほしくて、
「泣いていても落ち込んでいても、何も解決しないよ!」
「がんばりが足りないから、こんなことになるんだよ!」
などと声をかけていませんか?
こうした言葉は、お子さんの絶望した気持ちを救うことはできず、むしろ孤独感を生んでしまうかもしれません。
「がんばりが足りないから」→(もうがんばれないよ。だれか助けて。)
本来は、辛い気持ちを受け止めて欲しい親御さんからこの様に言われると、お子さんの心は、ますます追いつめられてしまう状態なのです。
昭和の親世代と、令和の子ども世代の違い
キッズダンススクールを運営していると、挫折が原因で、「うちの子、ダンスを辞めたいと言っています」というご相談を受けることもあります。
がんばっていれば、大なり小なり、挫折はあるもの。
挫折を避けて成長することはできないと、私は思います。
ではなぜ、乗り越えられる子とそうでない子がいるのでしょうか?
それは、
「挫折の経験をプラスに変換する経験」があるかないか、だと私は思います。
「挫折した後」が大切なのです。
寄り添ってもらえたのか?
それとも、追い込まれ、挫折したままで終わったのか?
「昭和の時代は挫折の後、追い込まれて孤独感を感じたとしても、乗り越えて強くなってきたんだよ!」と、思われる親御さんもいらっしゃるかもしれません。
私も昭和生まれ、昭和育ち。
自分は、挫折の度にど根性で強くなってきたと感じています。
しかし、私は昭和の頃のやり方で「根性の指導」をしません。
20年間子どもたちの指導に携わる私は、教育の方針も、時代と共に変化しているように感じるからです。
では、この令和の時代、なぜ、気持ちに寄り添って子どもを伸ばすほうがいいのか?
ここからは、私なりの考え方です。
まずは、園や学校での指導方針が昔と変化していると感じます。
多様性の時代、子どもたちはさまざまな考え方の他者を認める教育を受けています。
さらに、例えば算数の勉強でも、答えが出せたらそれだけでいい時代ではありません。
例えば「10-8=2」で、答えの2が出れば終わりではなく、「その答えに至るために、どう考えたのか」という「思考の過程」も大切にされます。
そして、昭和の時代の子どもと、現在の子どもとでは、情報量が圧倒的に違います。
疑問に思ったことは、すぐにインターネットやSNSで情報を得られる時代。
令和の子達は、多くの情報量の中、多様性を認め、思考のプロセスを大切にする授業を受けているのです。
そんな今を生きている子どもたちに
「泣いていてもどうにもならない! 乗り越えろ!」
と伝えたらどうでしょうか?
「どうやって乗り越えるの?」
「泣いていてもどうにもならないのはどうして?」
突き放すことで、挫折に負けず強くなってほしいという親心は、本来望んでいる信頼関係と反対の方向へ進んでしまうかもしれません。
前章で述べた通り、挫折の経験が少ない子どもたちは、ちょっとしたミスやトラブルでも、「絶望の感情」を持ってしまいます。
大切に描いた絵に垂らされた、真っ黒な絵の具の1滴を見つめるように…
(どうしたらいいの?)
(わからない。しんどい。)
(もうこんな思いをしたくないから、やめたい)
令和の時代は、突き放すのではなく、根拠を示して伝えることが大切だと思います。
お子さんの性格を知り、一番そばにいる親御さんこそが、挫折をプラスの経験に変えるプロセスや考え方を伝えられる存在だと思います。
親御さんのサポート方法 3ステップ
それでは、親御さんはどのようなサポートをしたらいいのでしょうか?
ステップ1
まずはシンプルに、
「かなしかったね」
そう伝えて、挫折したお子さんの気持ちを受け入れ、寄り添ってあげるといいと思います。
甘やかすことにならないか?
と心配される方もいらっしゃると思います。
大人から見ると些細な挫折だったとしても、子どもの側から見ると、どうしたらいいかわからない状態です。
お子さんにとって、親御さんは、厳しい指導者ですか?
それとも応援団ですか?
これまで多くの親御さんとお付き合いさせていただく中で、心身ともに健康に、実力を伸ばしてきたお子さんの多くは、応援団タイプのご家族です。
子どもたちを成長に導くためには、できないことを厳しく指導し、伸びる力を信じることも、深い愛情だと思います。
ただし、お子さんの心の状態をよく見てあげる必要があります。
もし、単純に怠けているのであれば、厳しい声かけも「応援している。がんばれよ!」とちゃんと届くと思うのですが、挫折して、心が元気でない時の厳しい声は、お子さんにとって応援団を失ってしまったような悲しい気持ちを生む可能性があります。
人は、
悲しい時
つらい時
寄り添える存在があることで、乗り越える気力が湧いてくるのではないかと思います。
それによって、今、何をしたらいいか考え、行動できるのではないでしょうか。
子ども時代は、親御さんに寄り添えることが、非常に大きな心の安心感につながります。
挫折が伴うような環境でもがんばれるのは、親御さんがお子さんにとって、いつでも寄り添える応援団になってあげられることがとても大切だと思います。
ステップ2
乗り越える気力が生まれてきたら、挫折した部分を大人が言葉で形にしてあげてください。
ここが、子どもには難しいのです。
例えば、ダンスをやめたいと言ってきた子には、このように会話します。
子
「ダンスやめたい。」
親
「どうしてやめたいと思ったの?」
子
「楽しくない。」
親
「楽しくないの? それはどうして?」
子
「難しい。」
親
「難しいから、楽しくなくなってきたんだ……。」
子
「難しくてできないから、やめたい。」
親
「どんなところが難しいの?」
子
「振り付けが覚えられない。」
親
「覚えるのって、大変よね……今週のレッスンが終わった後、覚えている部分を練習してみたかな?」
子
「していない。覚えられていないから。」
親
「全く覚えていないかな?」
子
「最初は覚えてる。でも最後のほうがわからない。」
親
「最後が覚えられなくて、最初のほうは覚えられたんだ!」
【解説】
最初の時点では、楽しくなくなってきたからやめたいと言っていたお子さんですが、詳しく聞くと、振り付けが覚えられないことで、楽しく感じられなくなっていることがわかりました。
そして、難しいと言っていたレッスンの中でも、最初の部分は振り付けを覚えられているという、できている部分にも気づけました。
子
「いっぱい覚えられないし、もうやめたい。」
親
「みんなは覚えられているのかな?」
子
「みんなはできている。自分だけできない。」
【解説】
たいていの場合、「自分だけできていない」と感じていることが多いです。
親
「先生に質問してみた? それとも、覚えているところだけでも家で練習してみたりしたのかな?」
子
「していない。」
【解説】
挫折をしている時は、多くの場合、お子さんの行動のどこかに、原因が潜んでいます。
年齢が小さく、挫折の経験が少ない場合は、このようにお子さんの言葉の裏にひそむ
ものを紐解くように質問していくことで、挫折の原因が見えてきます。
親
「もし、覚えるのが難しいところも踊れるようになったら楽しい? それでも楽しくない?」
子
「覚えられたら楽しい。」
親
「じゃあ、覚えるのが難しくても、そこができるようになれば、また楽しくがんばれるんだね!」
この会話は、実際私が(親の部分を私として)小学校低学年のお子さんとかわしたものです。
この子との会話は、10〜20分くらいでした。
話しているうちにがんばるポイントが見えてきて、その子の心が元気になったのが表情でわかりました。
「楽しくないからやめたい」
のではなく、
「振り付けが覚えられなくなってきて、挫折を経験している」
という状態でした。
そして、「覚えられたら続けたい」という本当の気持ちにもたどりつけました。
この子は、元気に今もダンスを楽しんでいます。
ステップ3
挫折を乗り越えるための最終仕上げ、それは「応援」です。
「いってらっしゃい」と笑顔で見送り、「おかえり」と笑顔で迎える。
そして、成長した部分をほめることです。
この段階になると、お子さん自身の感情も前を向いていると思います。
つらかった挫折の時期から、乗り越えることができた自分の成長を実感していることでしょう。
挫折は成長のターニングポイント
挫折をした時、みなさんは、どんなふうに感じますか?
私は「よっしゃ! 成長できる!」と思います。
私は超ポジティブシンキングなので、このような考え方なのですが、我が家の子育てにも取り入れるようにしています。
息子がテストで、
「うっかり間違えてしまった……」と元気なく帰ってきたとします。
すると私は、
「そこ間違えなくなったら、100点だね! どんなことに気を付けるといい?」
息子
「テストが終わった後に、見直すようにする!」
私
「おぉ! ナイスだね! 次のテストが楽しみだ!」
息子がダンスレッスンで伸び悩んでいた場合。
私
「最近楽しくない?」
息子
「うん……。難しくて。」
私
「難しいことにチャレンジできてるなんて、すごくいいことだね!」
息子
「でも、難しい。」
私
「どこが難しい?」
難しい部分をヒアリングした後は
私
「それができるようになったら、めっちゃかっこいいね! スランプっていって、思うように成長できない時もあるんだよ。スランプはだれにでもやってくる。だから焦らず行こう! そんな気持ちでも、レッスンを休まず行けていることがすごいよ! 応援しているよ!」
このような会話を続けていると、挫折した時に、前向きな気持ちを発想する力も身につきます。
挫折はあって当たり前。
その後の行動次第で、成長する経験になるのか、ただの挫折で終わるのか、違ってきます。
人生に何度もやってくる「挫折」というターニングポイントと向き合うことで、人の心はタフになるのです。
挫折=成長のチャンス
考え方次第で、
挫折は、成長するための大切な経験になります。
ぜひ、この経験を子ども時代にしっかりしてほしいと、私は願っています。
中には、お子さんが挫折を経験しないよう、先回りしてサポートしてしまう親御さんもいらっしゃいます。
しかし、そのまま大人になった時に、その子はどうなるでしょうか?
大人になって初めて挫折を経験したら?
経験は、人を強くすると思います。
このコラムと出合ってくださったご家族の笑顔が増えることを、心より願っております!
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